Date
この章では、JavaScriptで日付や時刻を扱うためのDateについて学びます。
Dateオブジェクト
Date
オブジェクトはString
やArray
などと同じく、ECMAScriptで定義されたビルトインオブジェクトです。
Date
オブジェクトをインスタンス化することで、ある特定の時刻を表すオブジェクトが得られます。
Date
における「時刻」は、UTC(協定世界時)の1970年1月1日0時0分0秒を基準とした相対的なミリ秒として保持されます。
このミリ秒の値のことを、本章では「時刻値」と呼びます。
Date
オブジェクトのインスタンスはそれぞれがひとつの時刻値を持ち、その時刻値を元に日付や時・分などを扱うメソッドを提供します。
インスタンスの作成
Date
オブジェクトのインスタンスは、常にnew演算子を使って作成します。
Date
オブジェクトのインスタンス作成には、大きく分けて2つの種類があります。
1つは現在の時刻をインスタンス化するもの、もう1つは任意の時刻をインスタンス化するものです。
現在の時刻をインスタンス化する
Date
をnewするときにコンストラクタ引数を何も渡さない場合、作成されるインスタンスは現在の時刻を表すものになります。
Date
オブジェクトのインスタンスではなく現在の時刻の時刻値だけが欲しい場合には、Date.now
メソッドの返り値を使います。
作成したインスタンスが持つ時刻値は、getTime
メソッドで取得できます。
また、toISOString
メソッドを使うと、その時刻をUTCにおけるISO 8601形式の文字列に変換できます。
ISO 8601とは国際規格となっている文字列の形式で、2006-01-02T15:04:05.999+09:00
のように時刻とタイムゾーン情報を表現します。
人間が見てもわかりやすい文字列であるため、広く利用されています。
// 現在の時刻を表すインスタンスを作成する
const now = new Date();
// 時刻値だけが欲しい場合にはDate.nowメソッドを使う
console.log(Date.now());
// 時刻値を取得する
console.log(now.getTime());
// 時刻をISO 8601形式の文字列で表示する
console.log(now.toISOString());
任意の時刻をインスタンス化する
コンストラクタ引数を渡すことで、任意の時刻を表すインスタンスを作成できます。
Date
のコンストラクタ関数は渡すデータ型や引数によって時刻の指定方法が変わります。
Date
は次の3種類を引数としてサポートしています。
- 時刻値を渡すもの
- 時刻を示す文字列を渡すもの
- 時刻の部分(年・月・日など)をそれぞれ数値で渡すもの
1つめは、コンストラクタ関数にミリ秒を表す数値型の引数を渡したときに適用されます。 渡した数値をUTCの1970年1月1日0時0分0秒を基準とした時刻値として扱います。 この方法は基準となる時刻とタイムゾーンが固定されているため、実行環境のタイムゾーンによる違いが起きないので安全です。 そのため、他の2つの方法と違ってタイムゾーンを考慮する必要がありません。
// 時刻のミリ秒値を直接指定する形式
// 1136214245999はUTCにおける"2006年1月2日15時04分05秒999"を表す
const date = new Date(1136214245999);
// 末尾の'Z'はUTCであることを表す
console.log(date.toISOString()); // => "2006-01-02T15:04:05.999Z"
2つめは、文字列型の引数を渡したときに適用されます。
RFC2822やISO 8601の形式に従った文字列を渡すと、
その文字列をパースして得られる時刻値を使って、Date
のインスタンスを作成します。
次のコードでは、ISO 8601形式の文字列を渡してDate
のインスタンスを作成します。
タイムゾーンを含む文字列の場合は、そのタイムゾーンにおける時刻として時刻値を計算します。
文字列からタイムゾーンが読み取れない場合は、実行環境のタイムゾーンによって時刻値を計算するため注意が必要です。
また、ISO 8601形式以外の文字列のパースは、ブラウザごとに異なる結果を返す可能性があるため注意しましょう。
// UTCにおける"2006年1月2日15時04分05秒999"を表すISO 8601形式の文字列
const inUTC = new Date("2006-01-02T15:04:05.999Z");
console.log(inUTC.toISOString()); // => "2006-01-02T15:04:05.999Z"
// 上記の例とは異なり、UTCであることを表す'Z'がついていないことに注意
// Asia/Tokyo(+09:00)で実行すると、UTCにおける表記は9時間前の06時04分05秒になる
const inLocal = new Date("2006-01-02T15:04:05.999");
console.log(inLocal.toISOString()); // "2006-01-02T06:04:05.999Z" (Asia/Tokyoの場合)
3つめは、時刻を次のように、年・月・日などの部分ごとの数値で指定する方法です。
new Date(year, month, day, hour, minutes, seconds, milliseconds);
コンストラクタ関数に2つ以上の引数を渡すと、この方法でDate
インスタンスが作成されます。
月内の日を表す第三引数(day
)から後ろの引数は省略可能です。
省略した場合のそれぞれの引数の初期値は0
ですが、日(day
)を表す第三引数だけは1
がデフォルト値となります。
また、月(month
)を表す第二引数は0
が1月に対応し、0
から11
までの数値で月を指定することにも注意しましょう。
先述した2つの方法と違い、この方法はタイムゾーンを指定できません。 渡した数値は常にローカルのタイムゾーンにおける時刻とみなされます。
結果が実行環境に依存してしまうため、基本的にこの方法は使うべきではありません。
時刻を部分ごとに指定したい場合は、Date.UTCメソッドを使うとよいでしょう。
渡す引数の形式は同じですが、Date.UTC
メソッドは渡された数値をUTCにおける時刻として扱い、その時刻値を返します。
// 実行環境における"2006年1月2日15時04分05秒999"を表す
// タイムゾーンを指定することはできない
const date1 = new Date(2006, 0, 2, 15, 4, 5, 999);
console.log(date1.toISOString()); // "2006-01-02T06:04:05.999Z" (Asia/Tokyoの場合)
// Date.UTCメソッドを使うとUTCに固定できる
const ms = Date.UTC(2006, 0, 2, 15, 4, 5, 999);
// 時刻値を渡すコンストラクタと併用する
const date2 = new Date(ms);
console.log(date2.toISOString()); // => "2006-01-02T15:04:05.999Z"
なお、どのオーバーロードにも当てはまらない引数や、時刻としてパースできない文字列を渡した際にも、Date
のインスタンスは作成されます。
ただし、このインスタンスが持つ時刻は不正であるため、getTime
メソッドはNaN
を返し、toString
メソッドはInvalid Date
という文字列を返します。
// 不正なDateインスタンスを作成する
const invalid = new Date("");
console.log(invalid.getTime()); // => NaN
console.log(invalid.toString()); // => "Invalid Date"
// 不正なDateインスタンスかを判定
console.log(Number.isNaN(invalid.getTime())); // => true
Dateのインスタンスメソッド
Date
オブジェクトのインスタンスは多くのメソッドを持っていますが、
ほとんどはgetHours
とsetHours
のような、時刻の各部分を取得・更新するためのメソッドです。
次のコードは、日付を決まった形式の文字列に変換しています。
getMonth
メソッドやsetMonth
メソッドのように月を数値で扱うメソッドは、0から11の数値で指定することに注意しましょう。あるDate
のインスタンスの時刻が何月かを表示するには、getMonth
メソッドの返り値に1を足す必要があります。
// YYYY/MM/DD形式の文字列に変換する関数
function formatDate(date) {
const yyyy = String(date.getFullYear());
// Stringの`padStart`メソッド(ES2017)で2桁になるように0埋めする
const mm = String(date.getMonth() + 1).padStart(2, "0");
const dd = String(date.getDate()).padStart(2, "0");
return `${yyyy}/${mm}/${dd}`;
}
const date = new Date("2006-01-02T15:04:05.999");
console.log(formatDate(date)); // => "2006/01/02"
getTimezoneOffset
メソッドは、実行環境のタイムゾーンのUTCからのオフセット値を分単位の数値で返します。
たとえばAsia/TokyoタイムゾーンはUTC+9時間なのでオフセット値は-9時間となり、getTimezoneOffset
メソッドの返り値は-540
です。
// getTimezoneOffsetはインスタンスメソッドなので、インスタンスが必要
const now = new Date();
// 時間単位にしたタイムゾーンオフセット
const timezoneOffsetInHours = now.getTimezoneOffset() / 60;
// UTCの現在の時間を計算できる
console.log(`Hours in UTC: ${now.getHours() + timezoneOffsetInHours}`);
現実のユースケースとDate
ここまでDate
オブジェクトとインスタンスメソッドについて述べましたが、
多くのユースケースにおいては機能が不十分です。
たとえば次のような場合に、Date
では直感的に記述できません。
- 任意の書式の文字列から時刻に変換するメソッドがない
- 「時刻を1時間進める」のように時刻を前後にずらす操作を提供するメソッドがない
- 任意のタイムゾーンにおける時刻を計算するメソッドがない
YYYY/MM/DD HH:mm
のようなフォーマットに基づいた文字列への変換を提供するメソッドがない
そのため、JavaScriptにおける日付・時刻の処理は、標準のDateではなくライブラリを使うことが一般的になっています。 代表的なライブラリとしては、Day.js、date-fns、js-joda、moment.jsの後継であるLuxonなどがあります。
// Day.jsで現在時刻のDay.jsオブジェクトを作る
const now = dayjs();
// addメソッドで10分進める
const future = now.add(10, "minute");
// formatメソッドで任意の書式の文字列に変換する
console.log(future.format("YYYY/MM/DD HH:mm"));
まとめ
この章では、Dateオブジェクトについて学びました。
Date
オブジェクトのインスタンスはある特定の時刻を表すビルトインオブジェクトDate
における「時刻」は、UTC(協定世界時)の1970年1月1日0時0分0秒を基準とした相対的なミリ秒として保持されているDate
コンストラクタで任意の時間を表すDate
インスタンスを作成できるDate
インスタンスメソッドにはさまざまなものがあるが、現実のユースケースでは機能が不十分になりやすい- ビルトインオブジェクトの
Date
のみではなく、ライブラリも合わせて利用するのが一般的